金属熱処理

「析出硬化処理について」

2021.11.11
金属熱処理

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析出硬化処理について

今回は熱処理の析出硬化処理(せきしゅつこうかしょり)についてです。時効硬化処理(じこうこうか)

とも呼ばれ、表面を硬化させる熱処理です。「焼き入れ焼き戻し」処理とどこが違うのかというと、

ひとつめは材質です。材質ではSK・SKD・SKH SUS420・440Cは焼入れ、C量の高いもの

を熱し、急冷して硬化させるというものが「焼入れ焼き戻し」になり、

一定の温度で硬くなるのが析出硬化処理(せきしゅつこうかしょり)となります。

 

析出硬化(せきしゅつこうか)とは

 

合金中に過飽和に固溶した化学成分が析出して、組織中に微小な粒子を分散・形成させることで、

材料の強度・硬さが向上する現象で、代表的なものは

・C1720(ベリリウム銅)

・SUS630~632(析出硬化系ステンレス)

・インコネル718・750X(耐熱鋼ステンレス)などになります。

 

析出硬化処理の注意点

一般的なステンレスと違い、銅やアルミ、ニオブやチタンなどの成分がカーボンなどと結びついて硬化する

ようなイメージです。焼入れ材とは異なり、温度、時間により材質別で最大硬度が決まっていることと

部分的にしか硬くならないため、完成品の手前で熱処理を行った場合、満足した硬度が得られないことです。

その他注意する点としては、熱処理後に酸化色が生じる場合があることと、酸化(錆)やすくなり、

変色することがあることです。

 

C1720(ベリリウム銅)に関しては熱処理温度により変形します。

熱処理をかける前に事前に確認おくべき材質です。

 

SUS630~632は変色と酸化です。

特に表面は変色しやすく、酸化も進みやすくなります。カーボンと銅、アルミが表面に浮き出るようなイメージで

他のステンレスと同等と考えると色々と問題が起こります。熱処理後はすぐに防錆処理、

次工程に表面処理がある場合も多いので、その工程でも時間をかけることなく進める方が安全です。

JISの規格で熱処理にはH900やH1150など番号を割り振られている場合があり、

図面上にもこのように、と表記されることがあります。場合にもよりますが、

販売されている材料には溶体化熱処理れているものがあります。購入先に確認することで、

熱処理の工程が少なくなります。

 

※溶体化処理 合金を均一固溶体の範囲の温度まで加熱して十分な時間保持し,

急冷して固溶体の状態を常温までもってくる処理でステンレスの金属特性を上げる熱処理になります。

 

 

インコネルの析出硬化(時効硬化)は硬化の最大値が正確で、熱処理後も酸化することはほぼありません。

表面色が変化する場合もありますが、その後の使用で酸化が進むことではありません。高温大気中でも

スケール(すすなど)が発生することも少なく、大変厳しい条件下で部品として使用される材質です。

その分、難加工材として扱われていますし、高価な材料です。

熱処理条件も特殊で、かつ長時間処理となり、熱処理の保持時間だけでも20時間以上、

昇温、降温、冷却までを含むと30時間近くかかります。

それに伴い熱処理費用も他の析出硬化系に比べて高額となってしまいます。

熱処理でも焼鈍をメインとしている会社であれば長時間処理も可能ですし、プログラムコントロールにより

24時間無人でも処理を行っていますので、ご相談だけでもいただければ幸いです。

インコネルは高額、難加工、長時間、というお話ですが、これも注意点があります。

 

「詰め込みすぎると変形します」

 

析出硬化を時効硬化とも言う位の長時間処理です。詰め込み過ぎると捻れたり、その形のまま硬化してしまいます。

コストを抑えようと一度に大量の熱処理を行おうとすると、全て寸法から外れる可能性も十分に考えられます。

高価なだけに慎重な工程をお勧めいたします。

 

 

アルミも析出硬化系の材質があり、JISの番号で識別することが可能性です。

大変申し訳ございませんが、アルミの析出硬化系の熱処理は専用設備が必要となり、

サーマル化工ではお受けすることが出来ません。

アルミの析出硬化を専用で行っている会社などにお問い合わせいただければと思います。

応力除去処理や軟化処理は社内で行っておりますので、ぜひお問い合わせ下さい。

 

 

 

 

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