「純鉄の熱処理」

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純鉄の熱処理
熱処理できますか? という問い合わせがきます。金属熱処理の会社ですので「はい、できます」
と答えるのが普通なのですが、答えは「いいえ、サーマル化工だけではできないこともあります」になります。
熱処理業界の団体調査によりますと、全体の90%近い会社が硬化処理、いわゆる「焼入れ」を主としており
サーマル化工の主体業務は軟化処理「焼きなまし」という聞きなれない熱処理を行っています。
この「焼きなまし」は専門用語で「焼鈍」(しょうどん)と呼ばれ、材質により「磁気焼鈍」(じきしょうどん)
と呼ばれる特殊工程になります。
「設備一覧」に関してはこちらをご覧ください。
「軟鉄」とは
「軟鉄」の中でも炭素量0.02%以下の低炭素鋼は「純鉄」と言われています。
この「純鉄」ですが加工を施すと加工硬化が起き、内外部にひずみが起きます。
外部ひずみを加工前後に軽減させる熱処理を「応力除去焼鈍」(低温焼鈍ともいいます)
内部ひずみ(磁性)を改善させる熱処理を「磁気焼鈍」といいます。
これらはどちらの処理もきわめて純粋な水素雰囲気中で「焼鈍」することが必要で、温度による内部ひずみの
再結晶化と同時に酸化物を除去することで、金属特性を向上させ、さまざまな製品へと使用されます。
「水素雰囲気による熱処理」に関してはこちらをご覧ください。
「主な磁性材料です」(JIS規格参照)
・純鉄 SUY 0種から3種まであり、各鋼材メーカーによりブランド化されてます。
代表的なものではELCH2(神戸製鋼所製) ME(大同特殊鋼)などがあります。
・快削純鉄 SUM 若干C量が高めですが、多くの製品に使用されています。
・冷間圧延 SPCC こちらも加工の形状などにより、多く使用されています。
・低炭素鋼 S10C 数値がカーボン量になります。45Cからは焼入れ材として使用される場合が多く、
軟化処理には長時間の熱処理が必要となり、磁性材料としての特性は得にくくなります。
また、磁性材料は加工途中に発生する不純物を除去しないと満足な磁気特性が得られません。
それにはきわめて純粋な水素雰囲気下での「焼鈍」を各鋼材メーカーで推奨しています。
「磁気焼鈍」はこちらをご覧ください。
「精密部品の熱処理での問題」
しかし、最初からお客様の満足する結果に応えられているいるわけではありません。寸法公差であったり、
磁気特性であったり、色々ありますが、それ以外の問題点を改善できないかというお問い合わせがあります。
最も多いお問い合わせは「製品同士の溶着」が発生です。
「焼鈍」という熱処理は600℃から800℃以上の高温で長時間処理が行われ、
「磁気焼鈍」になると850℃から900℃で全工程を12時間以上の熱処理を行います。
鈍いという言葉が入っている通り、ゆっくり時間をかけておこない金属特性を上げる熱処理です。
高温、長時間、雰囲気下(もしくは真空下)で熱処理をおこなうと金属表面が活性化され
溶着がおこります。
要因として考えられることは、
- 「炉内一杯に詰め込みすぎ」
これは硬度、特性のばらつきにも繋がり良品率低下の原因です。
- 「重ねすぎ・治具に入れすぎ」
炉内のスペース確保のため偏った投入は上記同様の結果となります。
- 「不十分な前処理」
切削油やコンタミは製品同士の溶着につながるだけでなく、特性の劣化に直結します。
- 「乱雑な治具への投入」
質量が合っているからといってバラバラに投入した場合は溶着変形と原因になります。
- 「整列手法の経験値不足」
治具への整列、投入量の標準化を図っていても、形状により溶着します。
サーマル化工には50年以上の経験があり、形状別に投入方法のノウハウがあります。
「部品加工例」はこちらをご覧ください。
今回は「純鉄」に関する事例になります
「焼鈍」専用ページはこちらから
近年は部品形状もより小さく、より細かく、より高精度を求められています。複雑な処理条件にも対応できます。
また疑問、課題、ご不明な点などございましたら、お問い合わせフォームにご連絡いただければ幸いです。
次回は「パーマロイ」に関しての投稿になります。