「パーマロイの熱処理」
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パーマロイの熱処理
今回は「パーマロイ編」になります。パーマロイはニッケルと鉄の合金です。
1)高透磁性
2)低保磁力
3)エネルギー損失僅少
の磁性材料です。しかし、部品加工すると全てを失ってしまいます。
このパーマロイの特性を最大限に引き出すには「磁気焼鈍」(じきしょうどん)
と呼ばれる熱処理が必要となります。
「設備一覧」に関してはこちらをご覧ください。
「パーマロイ」とは
パーマロイにはNi含有率によって名称が異なります。パーマロイはAからDまであり、
一般的に多く使用されているのは、
1) パーマロイB 45%Ni-Fe 高磁界(人と遠い距離)で使用されることが多く、
2) パーマロイC 78%Ni-Fe 低磁界(人に近い距離)で使用されています。
パーマロイは加工を施すと加工硬化が起き、内外部にひずみが起きます。
第一段階として外部ひずみを加工前後に軽減させる熱処理、「応力除去焼鈍」を行い、
第二段階で内部ひずみ(磁性)を改善させる熱処理を「磁気焼鈍」を行います。
パーマロイは純鉄やケイ素鋼板に比べて非常に高い特性を持っている材料になりますが、
1)異方向エネルギーが少なく
2)磁気歪みが小さく
3)不純物が少ない
という条件が揃わないと材料本来の磁気特性を発揮することが出来ません。
この3つを同時に行える工程は高純度の水素雰囲気下で熱処理をおこなう必要があります。
そんなことが同時に出来てしまうのがサーマル化工の熱処理技術です。
「水素雰囲気による熱処理」に関してはこちらをご覧ください。
「磁性材料」とは(JIS規格参照)
パーマロイは各鋼材メーカーによりブランド化されてます。
代表的なものではPC-1 PB-12(日立金属ネオマテリアル製)
MEN-PC PB(大同特殊鋼製)などがあります。
磁性材料は加工途中に発生する不純物を除去しないと満足な磁気特性が得られません。
それにはきわめて純粋な水素雰囲気下での「焼鈍」を各鋼材メーカーで推奨しています。
「磁気焼鈍」はこちらをご覧ください。
「100μm以下の熱処理」は可能?
パーマロイは非常に優秀な材料であるとともに、純鉄に比べ高価になります。
その為、熱処理による歩留まり率は極力少なくてはいけません。
また、1点ものである場合も多く、失敗は出来ないという受注例もあります。
多いお問い合わせは「製品同士の溶着」「変形」「磁気特性のばらつき」の順です。
「応力除去焼鈍」は600℃から900℃の間でおこない、炉冷、徐冷が必要です。
「磁気焼鈍」になると1100℃から1150℃で3時間以上熱処理を行い、炉冷で600℃まで
ゆっくりと冷やし(この間に不純物の除去がおこなわれています)
600℃から急冷することによって磁気特性が最大値まであがります。
全ての工程で24時間の熱処理が必要となり、一般の会社では現実的には行うことは難しいと思われます。
サーマル化工は月から金まで24時間連続操業です。
他社の3倍、稼働時間がありますので、長時間の処理が可能になります。
高温、長時間、雰囲気下(もしくは真空下)で熱処理をおこなうと金属表面が活性化され
溶着がおこります。要因は色々考えられますが、
- 「炉内一杯に詰め込みすぎ」
これは最も溶着する要因となり、特性のばらつきにも繋がり、ほぼ全数が不良となる原因です。
- 「重ねすぎ・治具に入れすぎ」
パーマロイは熱処理後、硬度が極端に落ちます。こちらもほぼ全数が不良となってしまいます。
- 「不十分な前処理」
切削油やコンタミは製品同士の溶着につながるだけでなく、特性の劣化に直結します。
- 「乱雑な治具への投入」
質量が合っているからといってバラバラに投入するのは絶対に行ってはいけません。
溶着・変形し、部品として使用することは出来なくなります。
- 「整列処理・整列梱包の経験不足」
パーマロイは治具への整列、投入量の標準化を図っていても、形状により溶着します。
50年以上の経験がある弊社では形状別に投入方法のノウハウがあります。
一度熱処理したパーマロイは少しの衝撃で変形、磁気特性の劣化が大きく見られる材料です。
サーマル化工では熱処理前後の保磁力測定、衝撃から製品を守る梱包手法のご提案も行っています。
「部品加工例」はこちらをご覧ください。
「焼鈍」専用ページはこちらから
今回は「パーマロイ」に関する事例を取り上げました。
近年は部品形状もより小さく、より細かく、より高精度を求められています。また、
複雑な処理条件にも対応できます。疑問、課題、ご不明な点などございましたら、
お問い合わせフォームにご連絡いただければ幸いです。
次回は「ステンレス」に関しての投稿になります。