あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
令和2年最初の投稿は「特殊鋼編」になります。
「特殊鋼」とは、鉄に炭素以外の元素を加えた合金鋼のことです。
特殊鋼は添加する元素によって特性が大幅に上昇します。
特性とは鋼の
・強度・硬度・耐摩耗性・耐食性・耐熱性
が増すことを指します。ただし、全てを網羅することは出来ませんので、それぞれ添加する元素で
特性を変化させ、目的によってその材質を使い分けています。
主な添加物(元素)として
・マンガン Mn 粘りを損なわず、強度が増します。
・クロム Cr 摩耗に強くなり、錆びにくくなります。
・モリブデン Mo 高温下での強度、硬度が増します。
・タングステン W モリブデンの上位、同等の作用があります。
・ニッケル Ni 粘りと強さが増し、温度にも強くなります。
・チタン Ti 表面硬度が増し、錆びにくくなります。
また、これ以外にも
・磁性を強くする・磁性を抑える
・精密加工が出来る・しなやかになる
といった特性を得る添加物もあり、このような材料からつくられた部品の熱処理をサーマル化工で行っています。
では、「特殊鋼」に必要な熱処理とは何か?今回は「特殊鋼」の熱処理を材質別にご紹介いたします。
サーマル化工で熱処理を行っている「特殊鋼」の熱処理をご説明します
「特殊鋼」は使用目的別に分類されていて、鉄・炭素を主とした鋼に比べ多くの添加物を
数パーセントずつ配合したものになります。添加物には希少金属が多く含まれており、
当然ですが高価なものがほとんどです。
画像はインコネル750X(Inconel®)の恒久バネになります。
この恒久バネの硬度をさらに増すためには「時効硬化処理」という熱処理が必要です。
特殊鋼のほとんどは開発段階から適切な熱処理条件が設定されている場合が多く、
インコネル750Xの「時効硬化処理」の場合
・704℃ 20時間保持
また、インコネル718では
・720℃ 8時間保持 → 620℃ 10時間保持
となります
昇温・降温と常温まで冷却する工程を入れると約30時間かかります。
この処理時間をどうやって行うのか?当然ですが人が管理するには無理があります。
また、自動制御で確実に処理を行えているか無人では不安も生じます。
サーマル化工は月曜日から金曜日まで24時間交代制による連続操業
を行っており、最長で120時間の処理が可能です。
長時間処理もなんなく行うことが出来ます。さらに自動制御に加えて
目視管理も行っておりますので、他社では不可能な処理が可能となります。
これらの「特殊鋼」は小ロットでかつ高単価な場合が多く、失敗は許されません。
大気中で処理を行ったり、雰囲気を形成出来ていなかったり(真空でも同様のことが言えます)
熱処理が何らかのトラブルで途絶えてしまうと従来の特性を得ることは出来ません。
そのような知識と経験は50年以上の実績があるサーマル化工の熱処理技術で対応いたします。
特殊鋼の添加剤でも使用されている元素
・モリブデン Mo
・タングステン W
・ニッケル Ni
の熱処理例です。
こちらの画像はタングステンとハステロイ(耐酸性に優れた特殊鋼)になります。
高温下での使用部品や酸洗が必要となる設備での部品に使用されるものです。
強度や硬度などの特性を得られるかわりに、非常に硬く部品に加工するには難しく、難加工材とも呼ばれます。
代償として無理に加工を行うと歪みが生じて図面寸法通りに仕上がらないという問題が起こります。
これには「応力除去焼鈍」が必要となり、その違いははっきりと表れます。
その処理温度ですが加工する材質や寸法、使用目的によって大きく
異なり、900℃前後から1100℃以上まで顧客により指定温度が違い、また保持時間も異なります。
特殊鋼も他の材質と同じく熱処理条件を間違えると元の硬度に戻すことは出来ません。
サーマル化工は24時間連続稼働、多くの温度帯を同時に処理が可能な
設備を保有しています。
「設備一覧」に関してはこちらをご覧ください。
画像はモリブデン Mo のワイヤー加工前ですが、同様に硬く加工は困難です。
こちらも「応力除去焼鈍」でしなやかさが増し、加工しやすくなります。
しかし、高純度の雰囲気で熱処理を行わないと特殊鋼は特性を得られなくなるだけでなく、
金属組織そのものが変化し、劣化の原因となってしまいます。
また、他の材質と同じく熱処理条件を間違えると元の硬度に戻すことは出来ません。
「特殊鋼」は前段でもご説明したように高価なものです。
それには正確な条件、長年の経験と豊富な実績のあるサーマル化工へお任せください。
「水素雰囲気による熱処理」に関してはこちらをご覧ください。
特殊鋼のほとんどは高温、長時間、雰囲気下(もしくは真空下)で熱処理をおこなっても
あまり変化は見受けられず、若干雰囲気が悪くてもスケールなどが出ることはありません。
しかし、材質によっては目視では判断できない不具合が生じる分、慎重に取り扱わなくてはいけません。
・想定していた特性が得られない・・・「温度条件が合っていない」
厚みや加工度合いによって大きく異なります。これには幾度の試作が必要となる場合があります。
サーマル化工では小型実験用炉を2基保有しており、研究開発案件や試作を得意としています。
・変形してしまった・・・「重ねすぎ・治具に入れすぎ」
特に長時間の熱処理が多い「特殊鋼」は入れすぎると変形の要因になります。
温度ムラは特性が得られない要因となり、最終工程まで不具合がわからない場合があります。
・処理後に変色してしまう・・・「不十分な前処理、安定していない雰囲気での熱処理」
「特殊鋼」は酸化、変色などが起こりにくい材質もありますが切削油やコンタミが残留していると、
表面の変色につながります。
また、目視や硬度、特性検査では判明しない組織の劣化が起こる場合があります。
「部品加工例」はこちらをご覧ください。
今回は「特殊鋼」に関する事例を取り上げました
近年は部品形状もより小さく、より細かく、より高精度を求められいますが、複雑な処理条件にも対応できます。
疑問、課題、ご不明な点などございましたら、お問い合わせフォームにご連絡いただければ幸いです。